日本禁煙学会のダンマツマ

前回のあらすじ:自宅内での喫煙で、4500万円の損害賠償を訴えられた!防音処理をして閉め切った部屋の中で、日に数本のタバコを吸ってただけなのに?ささやかな喫煙を断罪しようと日本禁煙学会、東京都議会議員、神奈川県警本部長が襲いかかる。緊迫の第一審判決は、原告の訴えを棄却。喫煙者は無事救われたかに見えたが、原告はこれを控訴。舞台は東京高等裁判所へ…。

 先日、横浜副流煙裁判・控訴審に提出された「甲65号証」「甲66号証」「甲81号証」が、被控訴人の妻である藤井敦子さんによって公開されました。日本禁煙学会・理事の松崎道幸氏、同・理事長の作田学氏による控訴人側意見書です。
 これらを読んで僕は、上の印象を受けたのでした。「これもう、日本禁煙学会の断末魔だよね」、と。

 横浜副流煙裁判の地方審(第一審)については、以前の記事で簡単にまとめたものを読んでもらうとして、その後の出来事を簡単にご紹介します。

2019年(令和元年)
11月28日 第一審・判決(訴え棄却)
12月10日 原告側より控訴
つまり、「原告」=「控訴人」「被告」=「被控訴人」となる
12月16日 作田学医師による控訴人・A娘の診察(往診)
(参考:作田医師によるA娘への無診察での診断書発行は、2017年4月19日)

2020年(令和2年)
2月28日 被控訴人に控訴理由書が到着
(本来の期限は1月29日)
4月7日 被控訴人が控訴答弁書を送付
4月16日 控訴審初公判予定(コロナ禍により延期)
7月31日 被控訴人が、控訴人準備書面を受け取る
8月11日 被控訴人準備書面を、控訴人に送付
8月20日 控訴審・初公判、および結審

10月29日 控訴審・判決(予定)

 なお、上記の意見書はそれぞれ下記の日付を持っています。
2020.2.18「甲65号証」松崎道幸
2020.1.27「甲66号証」作田学
2020.6.21「甲81号証」作田学

 この内まず最も早くに書かれた、作田学医師(日本禁煙学会理事長)による甲66号証・意見書」を見てみましょう。
(1)から(6)の6章に分かれていて、この(1)の章題が「私が記載した診断書の位置づけについて」。
 これは作田医師が原告の一人=A娘について無診察で診断書を発行したことが、第一審判決で「医師法20条違反」に当たると認定されたこと、また週刊新潮の取材に対し「書面は診断書でなく意見書です」と答えた(2020年2月20日号に記載)ことについての弁明を意味しています。

 この甲66号証でも作田医師は、件の診断書を「意見書」であると言っています
 実際には倉田文秋医師による受動喫煙症診断書、宮田幹夫医師による化学物質過敏症診断書の記載内容を整理・文書化したものであり、
日本赤十字社医療センターの電子カルテシステムでは「診断書」名義の書類作成しか出来ず、また「上記の通り診断いたします」の文言も、このシステム上やむを得ず使用したものだと言う。
 しかし第一審のために提出された「甲43号証・追加意見書」では、作田医師自身がこれを「診断書」としていました。また奇妙なことには、これらの後に出された甲81号証では同診断書を「証明書」と呼んでいます。

 ほとんど言い逃れとしか思えない作田医師の言い分ですが、当人もこれを理解しているのでしょう、上の「電子カルテシステム」を初めとした様々な言い訳を用意しています。
 それが(2)「原告A娘の病状の深刻さ」です。
 これを説明するため作田医師は、すでに証拠として提出されている「原告A娘の手紙」を全文引用しています。

作田学先生

1.激しい受動喫煙により、タバコだけでなく、洗剤から寝具や衣類の化学繊維まで、あらゆる化学物質が毒ガスに感じられ、その臭いを吸った瞬間、口の中、喉、肺、食道まで激痛が走り、呼吸困難を起こし、心臓が苦しくなる。安心して呼吸ができる場所すらない。
2.症状が酷く体重も10Kg以上減り、ほとんど寝たきりの状態です。
3.微量な化学物質にも激しく反応し体の具合が悪くても病院にも行けず、歯が痛くても歯医者にも行けず、今月の大切な乳がん検査にもとても行ける状態でなく、隣人の激しい受動喫煙により、特効薬も治療法も確立されていない化学物質過敏症にさせられて生活もできず、命も、おびやかされ、心身ともに凄まじく、耐えがたい苦しみです。
2017年4月18日 A娘署名

 さて医師たるものが、自身の診断ではなく患者の自己申告によって病状を書き記してどうするつもりなのか(しかも既に提出済みの資料を)、そう思うのは実は、素人考えです。
「受動喫煙症の診断」というものは、この患者の申告を丸ごと受け取って、「診断基準」に合わせて書き換えただけのものだからです(実際の診断書(意見書?)と比べてみて下さい)。

 そしてこの長い引用がここに必要であった意味は明白です。ここに続く言い訳の為には、A娘に対する同情心を喚起する必要があったからです。曰く

「原告A娘の病状は重篤で生命の危険が差し迫っている可能性も推認された」
「原告A娘の生命の危険を回避する、緊急避難としての背景があり」
「やむを得ず、この時点で、なんらかの形で書類を作成することを決意した。それによって、この書類を見た喫煙をしている人が少しでも喫煙を控えていただけることの方を優先した」

 簡単に言い換えましょうか。

「原告A娘が生命の危険に晒されていると推認されるため、緊急避難として、被控訴人の喫煙を少しでも控えさせようと、やむを得ず、診断書と記された意見書を出した」

 おかしな話です。

 まず被控訴人が少し喫煙を控えたとして、A娘の症状が回復もしくは緩和されることなどない。これは作田医師がおなじ意見書の(3)で言っていることです。
「受動喫煙でも、1日2〜3本ほどの喫煙でも、1日20本以上の喫煙でも、人体に与える効果には大差がなく、いずれも深刻であるということがわかる」
 つまり原告A娘は、受動喫煙の量が如何に少なくとも、やはり同じ健康被害を受け続ける。これは作田医師の別の意見書(甲43号証)にも書かれており、また日本禁煙学会による『禁煙学』にも書かれています。

「現状でできることは、藤井氏側が直ちに自宅でのタバコを完全に止めることなのです」(甲43号証7ページ)
「受動喫煙の完全停止、すなわち職場などの完全禁煙化のみが受動喫煙症の唯一の治療法である。」(『禁煙学 改訂4版』114ページ)

 また「診断書(意見書)」を出したのが、本当に「緊急避難」の為だったなら、もっと簡単な、普通に思いつく「緊急避難」の方策があります。
 A娘を、入院させることです。

 病院で、治療は出来ずとも酸素マスクをつけて生活させれば、すくなくともA娘の病因である「タバコ煙」から切り離され、これに反応するが故の症状は緩和されるでしょう。
 作田学も他のA娘を診察した医師も、彼女の病状を深刻さを訴えこそすれ、誰も「入院」という対策を打たなかった。それどころか、診察し診断書を発行するだけで「生命の危険が差し迫った重篤な患者」を放置し続けている。
(6)「まとめ」に作田医師はこう書いています。

本文書は「診断書」名目ではあるが、実質的には「意見書」であって、本書の記載内容によって、原告を受動喫煙から保護し、利益を与える可能性があっても、原告に危害や不利益が発生し得る可能性がある、とは言えない。本件は原告に対し、文書の記載内容に基づいた、手術・投薬等、侵襲や副作用の危険性を伴う治療を勧奨、指示するものでもなく、実施もされていない。また本文書にかかわるいかなる人物、団体にも不利益を発生させる目的を有しておらず、また、発生させてもいない。
 したがって、本文書の記載によって、私が医師法第20条に違反している、とはいえない、と考える。

 なるほど受動喫煙症の診断書は「危険性を伴う治療を勧奨、指示するもの」ではない。けれどこれは 逆に言うと 「なんら治療の役に立たない」ということです。
 するとこの一文の言うところは結局、「治療を指示していない診断書の発行は医師法20条違反に当たらない」であって、つまりは自らの保身のための言葉であり、患者(A娘)を救うために書かれたものではない。
 でありながら作田医師は、この後の甲81号証ではコロナ禍におけるダイヤモンド・プリンス号の事態を例としてこう言っています。

「このような極限状態においては、医師法も超越されると理解いたしました」

 いったいこの人は、なにを言ってるんだ?

 さて作田医師は第一審判決がでた後2019年12月16日に、今度はちゃんとA娘の診察(往診)を行います。
 しかしここにも奇妙なことがあります。
 作田学医師=日本禁煙学会理事長が、実際に診察した上で書かれている筈の、最も重要な証拠となる筈の「診断書」が、裁判証拠として提出されていないのです。この点、藤井敦子氏に確認を取りました。

 2017年4月19日、「生命の危険が差し迫っている」緊急事態のため無診察で診断書を出しておきながら、作田医師は実際に診察した2019年12月16日には診断書を書かなかったのでしょうか。医師が往診までしておいて診断書を書かないことがあるのでしょうか。診断書があるのだとしたら、何故それは証拠として提出されなかったのでしょうか。
 この後に作田医師は、少なくとも2つの意見書を裁判に提出しているのに?
 あるいは先の「意見書(証明書?)」に書き加えるべき新たな内容が存在しなかったから?

 これはおかしなことです。仮に前のものが「診断書」であったなら、同内容のものを新たに書き、裁判に提出する必要がなかったと言えるかも知れない。しかし作田医師自身はそれを「意見書」と呼んでいるのです。ならば第一審でそれが必要とされたように、ここで正規の「診断書」を書き、提出することは必須であるとさえ言えるでしょう。
 それに「新たな内容」を作田医師は、意見書にちゃんと書いています。
「両下肢の拘縮と骨格筋の萎縮が顕著であり、ベッド上で起床することさえ困難な、いわゆる寝たきりの状態と推察した」また2019年6月にA娘の乳癌が再発したことについて「受動喫煙によって乳癌が再発した疑いもある(受動喫煙症レベルⅤ=重症受動喫煙症の疑い)」とまで言っている。

 またこれが裁判に提出される証拠であるという点を考えれば、さらに重要な事実を、作田医師は知り得た筈なのです。
 すなわち「原告宅に侵入したタバコ煙がどれほどのものであったのか」です。

 作田医師は「甲43号証」において、原告家族の受動喫煙が「とっくに受忍限度を超えていると思います(7ページ)」と述べ、A妻の診断書に、被控訴人が「タバコを四六時中吸うようになり」と書いています。ただし被控訴人の説明では、1日に数本、自宅では主に防音室で喫煙する、というもので、控訴人の主張とは大きな隔たりがある。
「四六時中」とは「間断なく」という意味です。それが正しいことであれば作田医師は往診の際に必ずや、被控訴人宅から侵入してくるタバコ煙を感知している筈なのです。
 A娘を往診した=控訴人宅を訪問したにも関わらず、作田医師によるこの証言がないのはおかしい。
 またもし「その時はたまたま、タバコ煙が原告宅に侵入していなかった」ならば……それでも作田学は、原告家族三人を診察し診断書を発行した医師として、これを書き記すべき責任がある。そう考える僕の方が、間違っているのでしょうか。


 さてここまでは、日本禁煙学会理事長・作田学医師の矛盾に満ちた「証言」を見てきました。
 ならばただ、理事長=作田学だけがダメなのか。

 実際Twitter上では、日本禁煙学会会員を名乗る人が作田氏に批判的なコメントを寄せていたこともあります(真偽はもちろん不明ですけどね)。つまり作田学一人が堕落していて、日本禁煙学会の全体は、また彼らの本体とすら言える「受動喫煙症の診断」は間違っていない、と言えるのか。
 これを次に考えてみましょうか。

 実は第一審判決文において、受動喫煙症診断への最もクリティカルな指摘は、作田医師に対する「医師法20条違反」ではなく、下の一文にあります。

その基準が受動喫煙自体についての客観的証拠がなくとも、患者の申告だけで受動喫煙症と診断してかまわないとしているのは、早期治療に着手するためとか、法的手段をとるための布石とするといった一種の政策目的によるものと認められる。

 これに応えるのが「甲65号証」松崎道幸理事による意見書です。

 全体が2章に分かれていて、この(1)のタイトルが「受動喫煙症の診断においては、受動喫煙者の申告、すなわち詳細な問診が受動喫煙の客観指標測定に匹敵する意義を持つ」
 つまり受動喫煙症の診断は、患者の申告だけを根拠としてよい、との主張です。

 松崎医師はまず「一般的に」と断った上で「ある健康有害因子が、健康を損ねているか否かを証明するためには、有害物質の摂取量(ばく露量)に見合う健康被害が生じているかどうかを明らかにする必要がある」とし、「受動喫煙の主な客観指標は、血液中ニコチン濃度、尿中あるいは毛髪中ニコチンあるいはコチニン濃度、室内気のニコチン濃度、PM2.5などである」と、キチンとした説明を始めます。
 ただこの後に「しかし」と続きます。
「これらの指標測定には、専門的技術と多くの費用を要するため、受動喫煙者からの自己申告データで代用が可能かどうかについて検討されてきた」その結果「受動喫煙に関する非喫煙者の主観的申告と客観的指標との間に極めて良好な相関が存在することが明らかとなったのである」、と言う。
 そしてこれを証明した主な論文、として4本を挙げています。

 但しこの論文自体は、裁判に証拠として提出されていない。タイトル・著者・要旨・出典が与えられているだけで、この点、被控訴人が「控訴答弁書」23ページで批判しているところであります。
 ただ幸いなことに、件の論文はネット上に公開されてもいたので一応読むことは出来ます。

①成人喘息患者における環境タバコ煙への暴露状態の測定
②小児における室内気のニコチン濃度と保護者の喫煙状況の申告内容の比較
③多数の生涯非喫煙者コホートにおける受動喫煙状態の評価手法「スモークスケール」
④受動喫煙強度に関する自己申告データと客観的受動喫煙マーカーとの比較

 まだ読んでない皆さんは、これを見てどうでしょう。
「なるほど」と思われましたか? どんな実験・検証がされたんだと思いますか?

 僕はブラインド・テストみたいなものを想像して、それで被験者が感知した受動喫煙量が血中や毛髪、空気中のニコチン濃度と一致するなら、それは凄い説得力がある……などと思いましたが、勿論これらの論文は、そんなものではありません。

 甲65号証の松崎氏による「要旨」を簡単にまとめると「質問票などによる自己申告と、ニコチン量などの測定量が、良好な相関を示した」ってことになります。実際に論文を読んでみると、これは大旨正しい。
 つまり4つの実験に共通するのは、質問票を使う=アンケートをとることです。自宅で、会社で、バーや喫茶店で、どの程度の受動喫煙があったか、または喫煙したか。

 なので受動喫煙の場合、普通には「タバコがどのくらい吸われるのを見たか」となります。こうした普通のアンケートで「実際に見てはいないが、隣家で20本吸っていた」などと書く人はいない。いてもかなりの少数派でしょう。少なくとも僕が読んだ3本の論文には、そんな例は報告されていません。
 だとすれば、自己申告「タバコの煙にどれくらい晒されているか」と、ニコチン測定量との間に「良好な相関」が見られるのは、ある意味、当たり前のことなのです。

 とは言え僕は、これらの実験に意味がないとは思いません。
 ②の中に書かれているように「想起バイアス」や「応答バイアス」がこのような調査にどの程度の影響を与えるか、これを検証することに意義はあるでしょう。例えばこの②の調査は「家庭での、子どもの(3~9歳)受動喫煙」を対象にしたものであるため、ニコチンやETS(Environmenttal Tobacco Smoke=環境タバコ煙)を測定する調査であることを伏せ、それでも「喘息の子供を持つ親は喫煙を過少報告する可能性が高いことを発見した」と報告しています。

 ただこれらの調査・研究は、「受動喫煙症の診断が患者の自己申告のみで十分」を証明するものでは、ない。

 そもそもこれらの研究の目的と結論は、③のタイトルが示すように「大規模コホート(調査)における受動喫煙を評価するInstruments」として、よく準備された質問票が、そのInstrumentsたり得ることを示す、それだけのことだからです。
 例えば受動喫煙曝露割合(つまり受動喫煙者率)の調査や、ある集団におけるスクリーニング(受動喫煙者と非受動喫煙者を分ける)には役立つ。③に書かれているように、2千人の毛髪ニコチン量を調査するのに46000ユーロかかるとされる多大な費用を節約することが出来る。

 けれどこの事と、個々の患者を診察・診断することは、全く別のことと考えるべきでしょう。
 上のような調査が「良好な相関を示した」とはつまり、「個々の場合において完全な一致を見ることが出来なかった」ということだからです。

 松崎医師は意見書(1)の最後で「以上、受動喫煙状態に関する詳細な問診が受動喫煙症の診断にとって必要かつ十分条件であることを論証した」と言いますが、彼が挙げた論文は、このことを証明するものではありませんでした。
「質問票などによる自己申告と、ニコチン量などの測定値が、良好な相関を示した」➡️「受動喫煙曝露量は、自己申告のそれと一致する」➡️「患者の自己申告が、受動喫煙症を証明する」という、言い換えに過ぎない。

 端的に言って彼は、一見関係がありそうなだけの論文を挙げて、自分の主張を権威づけているだけなのです。

 松崎医師は意見書の(2)で、「全世界で、これまでに受動喫煙の健康影響について、1万6千点以上の科学論文が発表されている」と言い、「受動喫煙症診断基準が科学的根拠に基づかないかのような主張は、極めて不当であり」「いわれなき中傷と断ぜざるを得ない」なんて偉そうに言っています。
 けれど彼らの「科学論文」の使い方は結局こんなもんであって、1万冊の本を読めば傑作文学が書ける訳ではないように、どれだけ参照論文が多いか、では「受動喫煙症診断基準」の正しさを証明することは出来ません。

 そしてそのことは今や、明らかになってしまった。
 横浜副流煙裁判に提出された様々な証拠が、「自己申告のみによる受動喫煙症診断」の持つ問題点を、暴き出してくれているのです。

 例えば控訴人A夫には、25年に及ぶ喫煙歴がある。それは2015年春にまで及ぶのですが、これは控訴人一家が被控訴人のタバコ被害を感じるようになったと主張する2016年春の、たった1年前のこと。
 作田・倉田両医師から「受動喫煙症・レベル3」と診断される、ほんの2年前までは、A夫は能動喫煙者だった。そしてどうやら診察時には、両医師ともこの事実を知らなかったらしいのです。A夫によると問診票に過去の喫煙歴を書く欄がなかった、とのこと。
 その後作田医師はA夫の喫煙歴を知った上で、甲43号証「追加意見書(2019.3.28)」にこう書いています。

「止めて1年以上経過していて、しかも喫煙者側の喫煙が厳然と認められる以上、タバコの副流煙を生じさせているものが8割以上であり、過去の喫煙歴のあるA夫について、2割程度の寄与割合と考えることが合理的であります」
*ここで言われる「喫煙者側の喫煙」「タバコの副流煙」とは、被控訴人の喫煙を言っています

 ならば仮に、禁煙した数年後に肺がんに罹ったとする。その時点で職場や飲食店での受動喫煙があれば、彼は「受動喫煙症・レベル5」となってしまいます。

 おかしな話ではないですか?

 またA夫は倉田医師の診察を受けた際、被控訴人の吸うタバコを「タールの量が40mg以上含まれたガラム」だと記載しています。
 けれど被控訴人によると、それは違うタバコだったのです
。被控訴人が吸っていたのは、同じ「ガラム」ではあっても別のもので、タールは12mg。これは控訴人がその煙草の実物を持っている以上、調べれば分かることです。
*被控訴人は2016年9月に、自分が吸うタバコのサンプルを控訴人に渡していた

 さて上の2例では、患者=A夫が、診察時に「嘘をついていた」かどうかが分からないのです。
 喫煙歴を黙っていたのは「訊かれなかったから」、受動喫煙を受けている煙草のタール量を多く申告したのは「勘違いだった」かも知れない。
 ただどちらであったにせよ、受動喫煙症診断に「必要かつ十分条件」である筈の「患者の自己申告」は、正確ではなかった。これは事実なのです。

 そしてもっと単純に、誰でも分かる事実として、「人は嘘をつくことが出来る」ものです。

 作田学の意見書には「受動喫煙症に困っているとご相談を受けた方の中に、嘘を言っていると思われる方は皆無」と書かれています(甲81号証)。けれど普通の大人であれば、少なくともこれが未来においても常に事実となる、などと夢みる者はいないでしょう。
 なにより、もし仮に横浜副流煙裁判が、請求額の1/4以下=1千万円でも控訴人の訴えを呑んだならば尚のこと、今後受動喫煙症の診察を受けるのに、嘘を吐くものが出てこない訳がない。

 この裁判を原告(控訴人)の勝訴とするのはこの未来を是認することであり、言い換えればその判決こそが、未来の虚偽申告による受動喫煙症診断をもたらし、不当な損害賠償請求を生み出す種=判例となってしまうのです。

 被控訴人準備書面には、「自己申告による診断が冤罪の温床となることは論をまたない」との一文があります。誰がこれを、嘘や誇大な表現であると言えるでしょうか。

「受動喫煙の完全停止、すなわち職場などの完全禁煙化のみが受動喫煙症の唯一の治療法である」
「受動喫煙をなくさずに、薬物あるいは心理療法などで受動喫煙症を緩和ないし治癒させることは不可能である。また「受動喫煙に慣れる」ことも不可能である」

『禁煙学 改訂4版』114ページに書いてあることです。
 受動喫煙症は、受動喫煙をなくす=周囲の完全禁煙化以外には、治療の方法がない。

 けれどそれって本当に?

 受動喫煙症の診断基準には、各レベルに合わせ様々な「症状・疾患」が列挙されています。
 鼻炎、頭痛、肺炎、気管支炎、喘息、肺がん、何故か肺結核まで…。
 これら全て、医者にかかれば治療が施されますよね?

 肺がんのように、症状次第では治療が難しいものもありますが、それでも医師はなんらかの治療の可能性を探ってくれる。それを「治療法がない」の一言で済まし、診断書を書いた後の責任を患者と周囲の人間にすべて委ねてしまうのは、受動喫煙症診察医くらいなものでしょう。
  治療を考えない 「受動喫煙症の診断書」は、患者の周囲を威嚇し、或いは訴えを起こす以外の用途・目的を持ち得ません。第一審判決にあった指摘、

その基準が受動喫煙自体についての客観的証拠がなくとも、患者の申告だけで受動喫煙症と診断してかまわないとしているのは、(中略)法的手段をとるための布石とするといった一種の政策目的によるものと認められる。」

 これはどうあっても、真実としか考えられないのです。

 日本禁煙学会理事長・作田学は、自分の書いた「診断書」を「意見書」であると言い張り、こう言っています。

本文書は「診断書」名目ではあるが、実質的には「意見書」であって、(中略)また本文書にかかわるいかなる人物、団体にも不利益を発生させる目的を有しておらず、また、発生させてもいない。

 ぬけぬけと。そう言う他はない。
 この診断書こそが、「本文書にかかわる人物」=自宅の閉め切った部屋で日に数本(自宅では約1.5本)のタバコを吸うだけの被控訴人に過大な不利益を発生させ(請求額4500万円超)、またその目的を有した者(控訴人)のためにこそ、書かれたものだったからです。

 日本禁煙学会の会員からすれば、理事長作田学以下の幹部が横浜副流煙裁判に協力したことは「間違い」であったと思われるかも知れません。しかし部外者からすれば、そもそも日本禁煙学会が行っていたこと=受動喫煙症という疾患を生み出し、その診断書を出していたことこそが「間違い」なのです。
 横浜副流煙裁判に、作田学以下の幹部が原告=控訴人側協力者としてあったことはむしろ、この間違いが衆目に理解できるものとして現れるための、正しい行いだったとさえ言えるでしょう。
 彼らは彼ら自身の言葉によって、受動喫煙症診断の間違いを示してみせた。それはまた日本禁煙学会の顧問たる「日本医師会会長」「日本歯科医師会会長」「日本薬剤師会会長」「日本看護協会会長」、そして彼らと協力して「受動喫煙症」を生み出した「禁煙推進医師歯科医師連盟」の間違いでもあった。僕はそう思っています。


 う〜んと、こんな風に言うと「現に存在する、受動喫煙によって健康被害を受けた人間を無視しろと言うのか」の反論があるでしょうね。これについての僕の意見は、以前の記事にもう書いたのですが、ここに再掲させてもらいます。

 僕はこの世に「受動喫煙を原因とした疾患」がひとつも存在しないとは思いません。もしもタバコの煙に健康を損なうものがあるとして、狭い空間で濃密かつ持続的な受動喫煙を受けている人が存在しないとは言えないからです。ただその症状は、日本禁煙学会の診断基準が明らかにするように、別の疾患名で表すことが出来るものと考えます。その疾患の原因を、明らかにされた「濃密で持続的な受動喫煙」に求めることは不可能では無いでしょう。
「受動喫煙を原因とした疾患」は存在し得る。ただしこれを「受動喫煙症」と呼ぶのであれば、その診断基準は大幅に見直され、より客観的で医学的に精密なものでなければならないと考えます。今のままでは藤井さん達がその被害に遭ったように、スラップ訴訟に利用される可能性が高いからです。


資料リンク

作田学意見書(甲66号証)
https://note.com/atsukofujii/n/ndf6c95624299

作田学意見書(甲81号証)
https://note.com/atsukofujii/n/nb311a81ff132

松崎道幸意見書(甲65号証)
https://note.com/atsukofujii/n/n4920f8142952

松崎意見書に紹介されていた論文
①成人喘息患者における環境タバコ煙への暴露状態の測定
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1240408/
②小児における室内気のニコチン濃度と保護者の喫煙状況の申告内容の比較
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2077986/
③多数の生涯非喫煙者コホートにおける受動喫煙状態の評価手法「スモークスケール」
https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0085809
*ここに言う「スモークスケール」つまり「受動喫煙量のものさし」とは、この論文に書かれた実験・検証の結果を受けて作成された「質問表」のことです。リンク内にwordデータがあります。
④受動喫煙強度に関する自己申告データと客観的受動喫煙マーカーとの比較
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0213911117302157?via%3Dihub

煙福亭は、最初のものを除いた3つの論文を読みました。何故あと一個を読まないのかといえば、英語論文を読むほどの能力がないからですね。GoogleさんとMicrosoftさんのお力(翻訳機能)がなければ他の論文も読めませんでした。ありがとうGoogle、Microsoft。

横浜副流煙裁判・第一審判決文
https://note.com/atsukofujii/n/n1e4b85ec940d

作田学医師による原告家族の診断書
https://note.com/atsukofujii/n/n3e8b84b2be22
https://note.com/atsukofujii/n/ne3c274fbce26
https://note.com/atsukofujii/n/n7c247826d9ec

作田学意見書(甲43号証)
https://note.com/atsukofujii/n/n80a9e696cfd8

A夫の喫煙に関する陳述書(甲37号証)
https://note.com/atsukofujii/n/nf56109fbc6d6

受動喫煙症の問診票
https://note.com/atsukofujii/n/nded4b9f79c11

被告(被控訴人)の喫煙について
https://note.com/atsukofujii/n/na77006ceeadc
https://note.com/atsukofujii/n/n071c1adb5bb9

作田医師は「受動喫煙症に困っているとご相談を受けた方の中に、嘘を言っていると思われる方は皆無」と言うが、実は医師の方が診断書に嘘を書いた事実は、すでにあるのです。ぜひ読んでみて下さい。
https://note.com/atsukofujii/n/n7475d36ce730

受動喫煙症の診断基準(現行のものと2016改正前のもの)
http://www.jstc.or.jp/uploads/uploads/files/%20%20%E5%8F%97%E5%8B%95%E5%96%AB%E7%85%99%E7%97%87%E8%A8%BA%E6%96%AD%E5%9F%BA%E6%BA%96version2%20.xlsx%281%29.pdf
https://note.com/atsukofujii/n/nc73e1cbfbdd1


横浜副流煙裁判・第一審について

横浜副流煙裁判については、被告(被控訴人)の妻である藤井敦子氏、そしてこの問題を追っているジャーナリスト・黒薮哲哉氏が、情報を公開されています。残念なのは、日本禁煙学会を始め原告(控訴人)側からは、何の情報開示も言及も、為されていないことです。

横浜・副流煙裁判・冤罪事件における裁判資料及び未公開記録の公開~事件をジャーナリズムの土俵にのせる~|note
【ジャーナリスト黒薮哲哉氏による全面取材。事件詳細《メディア黒書》⇒】【音声動画による記録⇒】【署名サイト⇒】 記録⇒藤井敦子・横浜市青葉区すすき野
横浜・副流煙裁判
横浜・副流煙裁判 | MEDIA KOKUSYO
既存のメディアが取り上げないテーマを重視したサイト。具体的には新聞社の押し紙問題や折込広告の水増し問題をはじめ、携帯電話基地局の電磁波による健康被害の実態などを記事にしている。また、新自由主義、司法制度につていの論考も多い。
あなたの声がチカラになります
禁煙ファシズム・訴権(そけん)の濫用にNO!横浜副流煙裁判・冤罪事件を犯した医師法20条違反の作田学医師および日本禁煙学会の責任を問う!

 さてまあ、ずいぶん長くなってしまった文章を読んで、意地悪な人は「日本禁煙学会の揚げ足取りに躍起になってる」と感じたかも知れないですね。けれど煙福亭に言わせればこれは、仕方がないことでもあるのです。
 例えば僕がこの長い文章を一言で「作田さぁ、緊急事態とか言うんならA娘さんを入院させればよかったんじゃん」と言ったとしましょう。
 僕がバカだと思われます。
 受動喫煙症に縁遠い人からは「受動喫煙ごときで入院? なに大げさ言ってんだ?」でしょうし、詳しい人からは「入院したからって、受動喫煙症の治療が出来る訳じゃないでしょ」と言われてしまう。
 つまりですね、とことんバカな言説を批判するのは大変なことなんですよ。批判する方がバカに見えちゃって、話が終わります。
 話が長くなるのには、それなりの意味と事情がある。そこを汲み取っていただきたいのです。

The Rise and Fall of ZIGGY STARDUST
「ジギー・スターダストの栄枯盛衰」ですね。いや、「栄光と没落」の方がカッコいいかな?
日本禁煙学会会員の皆様がRock’n Roll Suicideなされないよう祈っております。
なんか、流行ってるみたいなので。

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