横浜副流煙裁判のビギナーズ・ガイド

「横浜副流煙裁判」。その名を聞いたことはあるけれど、マスコミで大きく取り上げられる訳でもなく、SNSでゴチャゴチャと議論がされてるのを見ても判断がつかない、という方はいるんじゃないかと考えます。そこでなるべく簡単に、しかし問題の大筋は理解できるような記事を書きたい、と思った次第です。

ここに書かれる「横浜副流煙裁判」については現在のところ、藤井被告の側から公開された情報しか確認できませんでした(元となった情報はなるべく下に示します)。
僕自身はここに出てくる誰一人として個人的に知りませんし、彼らと相談してこの記事を書いた訳ではありません。よって、
文責はあくまで僕=煙福亭にあることをご承知おきください。

まずは簡単に、時系列でこの裁判を見ていただきます。

[原告=控訴人] A夫・A妻・A娘
(70代夫婦と40代の娘の3人暮らし)
[被告人=被控訴人] 藤井将登
(妻の敦子さんと長女の3人暮らし)
A家族はマンションで、藤井家の斜め上の部屋に住んでいる。
*現在は控訴審を待つ段階なので、多くの資料で「控訴人」「被控訴人」と表現されていますが、煩雑となるのでここでは「原告」「被告」に統一させてもらいます。

2016
9.6
原告A夫妻が被告宅を初めて訪れ、タバコの煙について苦情を述べる。
藤井将登氏は普段仕事での外出が多く、自宅では、防音加工をして窓が開かない部屋で日におよそ1.5本のタバコ(市販タバコ換算)を吸うと説明。しかし換気扇下で吸う場合も稀にあるということで、タバコのサンプルを渡し、換気扇下で喫煙して、A家族の部屋まで臭いが届くかの実験を行う。A夫妻は臭いを確認できないと言明した。

9.22
マンション管理組合員のT氏と原告・被告の両夫婦で話し合い。藤井将登氏は6日以来マンションで喫煙していなかったが、A夫妻はその間にもタバコ臭はしたと言う。将登氏はその原因が自分でなかったと安堵する。ただしA夫妻は敦子氏の喫煙を疑い続ける。
この後もA夫妻は藤井氏宅を訪れ、苦情を言い、怪文書を投函し、またマンション管理組合にタバコ煙被害を訴え続けた。
10.31
A家族、くらた内科・倉田文秋医師の診察(受動喫煙症)を受ける。この日は診断書は書かれない。

*倉田医師によると「こじれすぎている。診断書を作成しても役に立たない。訴訟にまで進まないと問題解決できない可能性が推測され、『診断書が必要な段階になれば作成する』と説明」

2017
2.14
弁護士・東京都議会議員岡本光樹氏が原告A宅を訪れる。ゴミ漁りをして吸殻を集めるようアドバイスする。
3.8 
そよ風クリニック・宮田幹夫医師がA娘を「化学物質過敏症」と診断。
3.28、29 
倉田医師、A家族3人に「受動喫煙症 レベル3」の診断書交付
4.12、19 
日赤・作田学医師、A家族に「受動喫煙症」「化学物質過敏症」の診断書交付。
A夫はレベル3、妻・娘はレベル4。A娘については、無診察で診断書を発行。
*緑十字クリニック・松下功医師による紹介状(A夫及びA妻について、それぞれ4.1と4.8付。A娘についての紹介状はない)
4.20 
山田義雄弁護士より被告へ通知書(以後、数回)
8.25 
被告宅へ第一回警察訪問(青葉署刑事ほか、合計4名)(斎藤実指示)
11.21 
提訴 4500万円の損害賠償請求 「被告は自宅において、喫煙してはならない」
12.27 
第2回警察訪問(刑事2名)(斎藤実指示)

2018
1.10 
第一回口頭弁論
9月 
藤井氏、My News Japanに告発。黒薮哲哉氏が担当につく。
10.18 
黒薮哲哉氏、山田義雄・雄太両弁護士を取材
10.26 
原告陳述書にA夫の喫煙歴(2015春まで)が書かれる
11.10 
横浜地裁が方針変更。翌年の審議後、4.16より合議制に変わる。
*「合議制」は複数の裁判官(通常3名)によって審議されるもの。地方裁判所での民事裁判は通常、単独審。

2019
7.17
 
被告側協力者M氏(仮名)が日赤医療センターにおいて、作田学医師による受動喫煙症の診察を受け、診断書を受け取る。
9.19 
口頭弁論で結審
11.28 
横浜地方裁判所判決(訴え棄却=被告人側勝訴)
12.10 
原告側より控訴
12.16 
作田学・A娘を診察

2020
2.29
 
控訴理由書が被告側に到着(本来の期限は1.29だった)
4.7 
被告側・控訴答弁書提出(4.9期限)



さてでは、横浜副流煙裁判のなにが問題とされるか、です。

①ご近所トラブルの問題

 原告の言い分はそもそもが、かなり無理のあるものでした。
 原告は、藤井氏の喫煙によって家族3人の健康が損なわれたと言うのですが、被告である藤井将登氏はミュージシャンであるため外出が多く、家では防音処理された閉め切った部屋で1日におよそ1.5本のタバコ(被告は手巻きタバコを愛飲しており、市販タバコに換算すると1.5本分となる)を吸うだけ。そもそも斜め上の部屋に住む原告の部屋の中にまで、煙が入っていくことが有り得るのかと疑われるところです。それでも被告は最初の申し入れから2週間余り、喫煙を止めてみます。しかし原告家族は、なおもタバコの煙が部屋に入ってくると主張する。しかも将登氏の外出中にも、です。

 原告は藤井氏の外出を監視し、ゴミを漁り、妻の敦子さんや娘さんの喫煙まで疑います。宗教的とも言える異様な猜疑心が、会談の録音や原告側の日記・メモから伺い知ることができます。
 藤井家の女性二人が喫煙をしない事については、この家を訪れる近所の人の証言と二度にわたる警察の取り調べによって証明されています。さらに原告のゴミ漁りの結果、彼らが望んだであろう大量の吸殻が証拠として提出されていないことから、まず間違いないでしょう。

 そして裁判が起こされ、様々な事実が明るみになることで、原告の訴えの無理はますます露呈されることになりました。

●原告・A夫には25年間以上の喫煙歴が有り、それは2015年春にまで及ぶ(A夫の陳述書による)。これは原告が最初に藤井家にクレームを入れた1年半前です。
訴状によると原告家族は「平成28(2016)年春頃までは、全くこのような症状とは無縁な健康的で文化的な生活を送ってきてきた」とし、これを破壊したのが藤井氏の喫煙である、としています。ずいぶんと都合の良い言い草に聞こえないでしょうか。

●原告・A娘には乳がんの病歴があり、これに因るとされる適応障害によって10年来精神薬の処方を受けています。
化学物質過敏症の症状には、心因性ストレスに因るものも多いとされる。また一方で、薬物に含まれる化学物質が化学物質過敏症の原因・悪化要因ともなるとも言われます。
控訴答弁書に引用されたA娘に症状が出る時の状況・言動を見るに、彼女のノイローゼ的な傾向は顕著であって、副流煙による被害も、実は自身の妄想による部分が多いと考えられます。
適応障害=WHOのガイドライン(ICD−10)より「ストレス因により引き起こされる情緒面や行動面の症状で、社会機能が著しく障害されている状態」

②スラップ訴訟の問題

 上記のような問題があったにも関わらず、原告の訴えは民事訴訟としての裁判が起こされるものとなりました。これを起こした弁護士が存在する、このこと自体が問題と言えます。
 黒薮哲哉氏はこれをスラップ訴訟よりも「訴権の濫用」と言うべきとしていて、この表現こそ本件にはふさわしいでしょう。本来ならば公的な裁判で争われるべき実質を持たない、にも関わらずこれを裁判に起こした者がいる。山田義雄弁護士です。

山田義雄弁護士から藤井家へ、内容証明が届いたのが2017年4月20日。
原告が宮田・倉田・作田の3医師から診断書を受けたのが3月から4月19日まで。
8月には刑事ら4名による突然の取り調べ。
11月21日提訴。
12月に再びの取り調べ(刑事2名)。
翌2018年1月10日が、第1回口頭弁論。

 これを踏まえ、山田義雄弁護士による訴状を見てみます。

 まずその訴えに驚かされます。賠償金額4500万円以上というとてつもない額の要求、そして「被告は自宅において、喫煙してはならない」です。
 この恫喝的な態度が、おそらくは山田弁護士の策略なのでしょう。
 この策略を示すのが、ここに参じている原告側協力者の錚々たる顔ぶれです。

作田学医師=日本禁煙学会理事長
宮田幹夫医師=化学物質過敏症の権威・北里大学名誉教授
斎藤実=当時神奈川県警本部長であり、2020.1より警視総監。
*藤井家の取り調べは斎藤氏の指示によるものであり、被害届や告訴状が警察に出されていた故の捜査ではなかった。
岡本光樹=都民ファーストの会所属・東京都議会議員であり日本禁煙学会理事。弁護士。東京都受動喫煙防止条例草案作成者の一人。
*原告にゴミ漁り(吸殻収集)をアドバイスしたが、訴訟を勧めたことはなく、山田弁護士を紹介もしていない、と黒薮氏に回答はしている。

 こうした社会的権威が原告側のバックにいると示す。これは被告側からすれば、恫喝されている、脅されていると受け取られる。スラップ訴訟に特徴的な手口です。またこれらの名前が裁判官に与える印象も、決して小さくはない筈です。

 さて一方で、訴状の内容にまで踏み込んでいくと、そこには根拠のない主観的表現と、裁判官の情に訴えるような、感情的な表現に溢れています。

「(被告は)日中から深夜まではほとんどひっきりなしにタバコを吸い続けているものと思われ、原告A娘を含む家族全員が大きな恐怖と不安の中で生活しているのである」
「被告に喫煙を控えてくれるように、再三再四、懇請してきたにも拘らず、これを無視され、その為の精神的苦痛は著しい」
「就寝時にも、タバコ臭が充満して辛く」「窓を閉め切っても、午前中から深夜まで副流煙が入ってくる」「我が家に副流煙が充満し、三度、肺の激痛、呼吸困難を起こしてしまった」「食事すら、凄く辛いが、生きる為に、必死に食べている」
「恐怖と、化学物質過敏症の症状は、筆舌に尽くしがたい苦しみである」「A娘は〜生存そのものが、脅かされているのである」
「被告は原告らが、被告の喫煙によってこのような重大な結果を引きおこしていることについて、認識しないはずはない。それにも拘らず全く思いを致していない。それ程の事が発生する筈がないと高をくくっているのであろうか。しかし現実には客観的に重大かつ、深刻な事態が発生しているのである」
「誠意ある人道的な対応を強く求めるものである」

 では何故ここまで、情に訴えかける必要があるのか?
 それはこの訴えの内容が、斯界の権威である医師の診断書を持つにも関わらず、客観性・明証性に乏しいからです。

③受動喫煙症・化学物質過敏症の問題

「原告らの被害の原因行為は、被告の喫煙でしかあり得ないのである」
 訴状にはそう断言されています。これを証明するものこそが「受動喫煙症」「化学物質過敏症」の診断書です。

 ただ「受動喫煙症」「化学物質過敏症」という疾患自体が、まだ医学会において十分な認知を得られていないものです。「化学物質過敏症」は未だその病態整理と発生機序についての確証に乏しく、アレルギーや心身症*、シックハウス症候群などとの区別が出来にくい。
*ストレスの影響で機能的(器質的)な障害が発生する疾患のこと。有名なところでは過敏性腸症候群などがこれに当たる。
 一方で「受動喫煙症」はその発生要因を「タバコの副流煙」に固定し、あらゆる疾患の原因をこれに求めるものです(日本禁煙学会の診断基準によれば、驚いたことに「肺結核」までもが受動喫煙症の症状のひとつ、とされている)。

そして「受動喫煙症」は日本禁煙学会(理事長・作田学)が、「化学物質過敏症」は北里研究所病院(宮田幹夫は北里大学名誉教授)が、それぞれ独自に規定した疾患であることも知っておくべきでしょう。
 また両者の関係ですが、受動喫煙症・レベル4の症状の一つに化学物質過敏症が加えられていて、一方では受動喫煙症の悪化により化学物質過敏症を発症する、という説もあります。そもそも症状が多岐に渡り、病態整理が十分でないのが「受動喫煙症」であり「化学物質過敏症」であるので、この関係性は僕たち素人には計り知れないものでもありますね。

 さてしかし、「被告の喫煙による副流煙が原告家族の症状の原因」であることでは、両者はぴったり一致しているのです。ただしその理由は、3医師が原因を被告の副流煙に限定するための様々な検査をし、原告家族の住環境などを調査した結果ではなく、患者の自己申告が「被告による副流煙が原因」であったからです。

 さらに信じがたいのは、裁判が進みA夫の喫煙歴(25年以上)などが明らかになった後ですら、医師たちはこの考えを覆していないということでしょう。
 作田学は本裁判の意見書でこう述べているのです。
「(A夫を受動喫煙症と診断する根拠)止めて1年以上経過していて、しかも喫煙者側の喫煙が厳然と認められる以上、タバコの副流煙を生じさせているものが8割以上であり、過去の喫煙歴のあるA夫氏について、2割程度の寄与割合と考えることが合理的であります。」
 8割、2割という数字が何を基準にして測られるものか、全く理解できません。そもそもタバコの健康被害は、吸っている時から何年何十年の後に症状が現れるものだと、ずっと言われてきた事です。また彼の医師たちが言うサードハンドスモークなる概念(煙のついた衣服や家具からでも受動喫煙被害は起こる)が真実ならば、「A夫の喫煙によって家族が受動喫煙症になった」が正しい論理の道筋であり、また「この事例こそがサードハンドスモークの証明である」となる筈ではないでしょうか。

 一方、化学物質過敏症はその名の通り、様々な化学物質により発症するものです。A家族は当時新築であったマンションに入居(1980)しており、11年前には改装、宮田医師の診察を受けた当時もまた、マンションは大規模塗装工事中でした。なおかつA夫は大腸がん、A娘は乳がんの罹患歴があり、A娘は精神薬を飲み続けている。原因として考えられるべき化学物質はあまりにも多い。にも拘らず、宮田医師は裁判の意見書でこう証言しています。
「本患者さんは工事後でも特に違和感がなく、タバコの副流煙が流入してくることから症状が悪化しております。やはりタバコの副流煙を中心に考えるべきと考えます」
 化学物質過敏症の定義として「かなり大量の化学物質に接した後、または微量な化学物質に長期に接触した後で、非常に微量な化学物質に再接触した場合に出てくる不愉快な症状」とは、宮田医師の著書に書かれていることです。ならばその疾患の原因たる「かなり大量に接した化学物質」とは、マンション斜め下の部屋から流れ込む副流煙であり得るでしょうか。「1日1.5本」の藤井氏の喫煙量が、仮にその10倍あったとしても、これ以上に考えられるべき原因はある筈なのです。

 作田医師にとってはA夫の喫煙歴、宮田医師にとってはこれに加え病歴と住居環境、これらは自らの診断を覆すべき重大な事実の筈です。なのに何故、裁判が進んだ後ですら彼らは、自らの診断=「被告の喫煙こそがA家族の諸症状の原因である」に固執するのでしょう。
 それこそ、これまでの自身の学説を否定しかねないほどに。

 作田学氏の追加意見書https://note.com/atsukofujii/n/n80a9e696cfd8
 宮田幹夫氏の意見書https://note.com/atsukofujii/n/n162a1a3ebcde

④判決
https://note.com/atsukofujii/n/n1e4b85ec940d

 2019年11月28日、第一審判決が公判されました。
原告らの請求は、いずれも理由がないから棄却すべきである
 つまり被告・藤井将登さんの全面勝訴です。
 作田学医師のA娘に対する無診察での診断書発行は「医師法20条違反」とされ、また倉田・宮田・作田3医師の診断書の証拠能力は否定されています。

 ここで全てが終わったとして、事の始めを思い起こせば、物語は簡単に書き表すことも出来ます。
「存在しない煙を盾にとって隣人を貶め、訴えを起こした人がいましたが、裁判した結果、訴えを棄却されました」
 おとぎ話にも似た、当然のようなハッピーエンド。けれど現実には、この間に余計なものが沢山くっついていて、この余計なものが3年以上もの間、藤井さん一家を苦しめ続けました。

 そして横浜副流煙裁判は、まだ終わってはいないのです。

 原告側は一審判決を全面否定、控訴しました。控訴審は4月に始まる予定でしたが、新型コロナウイルスによって延期されています。
これについては以前にブログ記事として書いていますので、参照いただければと思います。

……………………………………………………………………

 さてここまで見ていくと、この横浜副流煙裁判の第一審が「棄却」とされたのは当たり前のことに思えますし、控訴審でも原告側の言い分が通るなどあり得ないと思われるかも知れません。僕もまた、藤井さんの勝訴を願っていますが、けれどそうなって当然のこととは考えていません。

 少なくとも、提訴された時点での被告・藤井さん一家の心境は、絶望的なものではなかったかと想像できます。目に見えない副流煙の害を、3人もの「専門医」の診断書をつけて糾弾されるのです。これを真っ直ぐに受け止め、正面から反論するならば、それは「悪魔の証明」になってしまうでしょう。
「被告の吸うタバコの煙が、原告の健康になんの害をも与えていないことを証明せよ」
 実際にネット上、twitterやYahooニュースのコメント欄では禁煙主義者のこのような無理な主張を見ることが有りますし、そもそも日本禁煙学会やWHOが主張する「タバコの副流煙の危険性には閾値がない」とは、現実の場面ではこんな無理な主張を意味します。
 また突然の、数人の刑事による取り調べ、それにマンションの管理組合の対応なども、不安要素としてあまりに大きいものです。
 警察の取り調べを受けることは、僕たち一般人にとっては「社会悪」と扱われることに等しい。また善良な一般市民というものは、「とりあえず弱者・被害者(に見える側)の味方をしておけば間違いない」などと考えてしまいがちです。実際に管理組合は、マンションに受動喫煙の害を訴えるポスターを掲示するなどの対応をしています。
 藤井さん達は、告訴されてからその事を周りの住人達にも公にしましたが、原告側は逆に、提訴したことを隠すようにしていたそうです。これまで受動喫煙の害を訴えてきたのと対照的に。
 僕たち、藤井さんの訴えを聞いてきた人間はこれを、藤井さん側の公明正大と原告側の後ろ暗さの現れとして感じ取るかも知れませんが、実際そこに住むマンションの住人達が同じように感じ取っていたとも限りません。もしかしたらこれを、弱者(原告・受動喫煙被害者)に対して攻撃的な強者(被告・わがままな喫煙者)という図式として見ることもあり得るのです。ただ藤井さん側にご近所の協力者が多いらしいことは、普段の行いが幸いしてくれたのでしょうが。

 単純に考えて、身に覚えのない罪で訴えられるのは辛いことです。
 自分では自身が無実であることを知っている。けれど多くの証言が「そうではない」と言い、自分の罪の「証拠」までが存在する(ここでは3医師の診断書)。これが冤罪です。さらに質の悪いことには、「受動喫煙の害」というものは、当人(喫煙者)の自覚の外に「それがある」と言ってしまえるものなのです。それが常識では信じられないほどの、ほんのわずかな煙であっても。

 藤井さん達が第一審で勝訴したのは、原告の主張にある矛盾を追及し、様々な戦略・行動を通じて原告の訴えにある嘘を暴くことによって成し遂げられたものです。僕らにこれが理の当然に見えたとしても、藤井さんたちにとって第一審の判決は当然ではなく、また控訴審でも必ず勝てるとは、思っていないのではないでしょうか。それこそ「報告事件」のような問題すら懸念材料となっているでしょう。

 僕はぜひ、この裁判を知った皆さんが「自分が訴えられたとしたら」「自分が近隣の人に告訴されたら」「喫煙で」あるいは「柔軟剤で(あり得ることです)」「ペットで」という問題意識を持って、藤井さんの公開してくれている情報を精査してほしい、と思います。
 こんな裁判に巻き込まれることは、今現在の社会では、誰にでも起こり得ることだからです。スラップ訴訟の一つのあり方として「相手を破滅させる/排除するために起こす」場合があります。賠償金額を、それが叶う金額として計算するのです。
 本裁判の「賠償金額4500万円」にもその疑いがないでしょうか。また化学物質過敏症に関わる「香害」という言葉も、すでに一般的になってきています。
 本裁判が重要なのは、これが多くの人のこれからの生活に関わるものだからです。裁判は常に「判例」を尊重します。時には、判例の存在が理不尽な判決を可能ならしめることさえある(判例を拡大解釈して、自己の言い分に利用する…この裁判でも使われた策略です)。つまり本裁判の判決が、僕たちの明日の生活を左右することは、十分にあり得ることなのです。

https://news.livedoor.com/article/detail/18392649/


 ここまでを読んで、では非喫煙者の皆さんはどう思ったでしょうか。
 藤井敦子氏はTwitterでこう言っています。
「この件を発信する時、喫煙側に分の良いストーリーがまわってきた、そう思った時にはすでに作田のストーリーに取り込まれています」
 この「ストーリー」とはなんでしょう。
 僕自身がTwitterで、良い例となる「クソリプ」を受けました。
「本質的に人の健康を食い物にしているタバコ産業と、他人のタバコに苦しめられている人を助けようとしている活動と、どちらが悪どいかって話」
 つまり「喫煙者VS禁煙ファシズム」という見方は、立場を替えると「喫煙擁護者VS受動喫煙被害者」に読み替えられ、こんな馬鹿げたストーリーにすり替えられてしまう危険があるのです。

 僕はこれまで、「社会的権威が、自身の政治的思惑から、個人の生活を押し潰そうとしたもの」としてこの横浜副流煙裁判を描いてきた自覚があります。しかしこの事情をよく知らない、或いは同じように考えない人には、「受動喫煙に苦しめられる、か弱い庶民を救おうとする裁判」に見えるかも知れません。だから一度、この裁判の中心で議論されている「タバコの害」を括弧に入れて見直してみる態度は重要に思えます。
 この裁判を「ご近所トラブル」という視点から見れば、問題はシンプルになります。
「原告は、被告の【喫煙】が自身の体調不良の原因だと主張する。これは本当のことなのか。客観的に状況を分析すれば、原告の勘違い・思い込みによるのではないのか」となります。
 しかしこれを「受動喫煙の被害はこれほどに深刻であり、この健康被害から被害者を守る為には、喫煙が排除され、喫煙者は罰を受けなければならない」そう読み替えたのが、作田学であり宮田幹夫であり、原告側の戦略であるのです。
またこんなツイートを目にすることもありました。
「横浜受動喫煙裁判は煙草撲滅の為に必ず勝つ必要な重要な裁判だ(ママ)。受動喫煙させられたと訴えられたら4500万円も取られると思えばタバコなど吸う場所などこの世に無くなる。必ず勝って判例を作ればこっちのものだ。その為ならば政治家や警察も利用すべき。それだけのメリットはある」

 この裁判を「喫煙者V S受動喫煙者」の図式に持ち込む。これはまさに、作田学の思惑に嵌ることでしょう。しかし現在の時勢においては「タバコだからこそ」、この裁判は成立した。
 例えばコロナ騒動にあって、パチンコ店やいわゆる夜の街の営業があれほど問題となり賛否両論喧しかったのに比べ、喫煙所はまるで当然のように閉鎖され、いまだに再開されていないところが少なくありません。特に議論されることもなくいつの間にか、です。
 つまりあの馬鹿げたクソリプ、これに象徴される「タバコ・喫煙者相手なら、如何にぞんざいに扱っても構わない」という世の中の空気が、この裁判を可能にしたのだと思えてなりません。そしてこの裁判が原告側の勝訴に終われば、タバコのみならず様々な人間の営みが「他人の迷惑」そして「不快感」の名の元に排斥されていくだろう事は火を見るより明らか、でしょう。

 僕は被告・藤井将登氏が今、自分の喫煙に引け目を感じているのではないかと心配しています。結果的に家族に迷惑をかけた、自分のささやかな喫煙を悔いてはいないだろうか、と。
 それは違う、と言いたいのです。
 同じ喫煙者としてだけでなく、他の役に立つ訳でない自分の楽しみを持つ者の一人として、僕は、なにものかに悪の仮面をかぶせて断罪し、排斥しようとする勢力を、憎む者です。
 僕がこの問題に関心をもつ個人的な動機は、ここにあるのです。


より詳しく事実を知るためのリンク
 僕がこの横浜副流煙裁判について知り得た情報は、ここに書かれたもので、ほとんど全てです。

被告人の妻である藤井敦子氏が公開しているもの

Notehttps://note.com/atsukofujii/n/n5c69f54ee481

Twitterhttps://twitter.com/DuvallyMonika

早くからこの問題を調査している黒薮哲哉氏の報道

横浜・副流煙裁判 | MEDIA KOKUSYO
既存のメディアが取り上げないテーマを重視したサイト。具体的には新聞社の押し紙問題や折込広告の水増し問題をはじめ、携帯電話基地局の電磁波による健康被害の実態などを記事にしている。また、新自由主義、司法制度につていの論考も多い。
禁煙学会・作田学理事長の医師法20条違反を横浜地裁が認定、禁煙ファシズムを断罪――横浜副流煙裁判、病院潜入取材で分かった闇|MyNewsJapan
2019年7月17日、夫妻に扮した一組の男女が、JR渋谷駅のバス停から日本赤十字社医療センター(東京・広尾)へ向かった。副流煙裁判の被告・藤井将登さんの妻・敦子さんと、支援者のМさん(仮名)だ。原告側が裁判所に提出した診断書に不可解な点が...

Twitterで嫌煙者からこんなことをよく言われます。
「一方的な意見だけを見てものを言うのは如何なものか」
しかし残念なことに、原告側、これに協力している高名な方々による、この裁判についての情報提供は僕には見つけられませんでした。なので当件とは関わりない彼らの一般的見解を知れるようなものを以下に紹介します。

作田学
日本禁煙学会理事長。タバコについての著作はないようですが、日本禁煙学会のHPを見れば、彼の署名がある無数の(!)抗議文や要請を見る事ができます。
http://www.nosmoke55.jp/action.html
詳しくない方のために補足しておきますが「日本禁煙学会」は実際には学会ではなく、公益性の有無を問われない「一般社団法人」です。彼らの中心的課題がどこにあるかは、彼らの「学術総会」のプログラムから理解できるでしょう。
https://www.kuba.co.jp/jstc2016/pdf/jstc2016_abstracts.pdf

宮田幹夫
北里大学名誉教授で、化学物質過敏症について多くの著作があります。http://www.motheru.jp/kakeru03.html

岡本光樹
本件への関わりは薄いのかも知れません。ただし彼の立場と、彼が既に「家庭での喫煙禁止」に「通報規定」を盛り込んだ豊島区の条例草案に関わっていることは注目されるところでしょう。
https://ironna.jp/article/7826
https://www.zakzak.co.jp/soc/news/171026/soc1710260027-n1.html

斎藤実
彼が当件に関わることに何か動機らしきものがあるのか、僕には伺い知る事ができませんでした。ただし当時神奈川県警トップであり、現・警視総監である彼の要請がどれほど大きな意味を持つものか……例えば、この要請を受けた青葉署山本署長から山田弁護士へ、電話の中でこう言っています「場合によれば傷害罪になり得るかも知れない」。
藤井家への最初の取り調べをした望月刑事は当時、刑事課強行犯係係長でした。
原告側から斎藤実氏への陳情の証拠https://note.com/atsukofujii/n/n93b2a5ae020c


クイックリファレンス

黒薮哲哉氏による、20年1月段階での「横浜副流煙裁判のまとめ」

原告・訴状
https://note.com/atsukofujii/n/n6599af3630c7

被告・第一審最終準備書面
http://www.kokusyo.jp/wp-content/uploads/2019/09/yokohama2.pdf

被告・控訴答弁書
https://note.com/atsukofujii/n/nbcea86b2455d

原告夫妻と被告夫妻による2回目の話し合い

A夫の喫煙について
https://note.com/atsukofujii/n/ne79addba935d
https://note.com/atsukofujii/n/nf56109fbc6d6

黒薮哲哉氏による山田義雄弁護士へのインタビュー
https://note.com/atsukofujii/n/n7b7dafca920c

作田学医師の診察
*被告側協力者が作田氏に「受動喫煙症」の診察を受け、診断書を受けた経緯と、この診察の録音です。協力者は自己の受動喫煙状況のほかに、衣服の繊維でも咳込む症状が出ること、洋服店では濡らしたマスクを装着してこれを防いでいることなどを話します。その結果、作田医師の診断は「受動喫煙症レベル3 咳、痰、不整脈」。「タバコの煙の無いところでは全く症状が起こらない」と書かれました。

日本禁煙学会理事長・作田学医師による診断(横浜・副流煙裁判)
キャンペーンに賛同!
◆横浜・副流煙裁判◆ 原告が控訴した!ウソの診断書を書いた日本禁煙学会トップ・作田学医師 / 被害届、令状なしで2度も藤井家を取り調べさせた斎藤実・警視総監を追及する!

街中でのポイ捨て、コンビニ前にタムロして喫煙する者……こういう連中を見て、喫煙者一般を「ヤカラ」と思ってしまうのも無理ないかもしれません。けれどジャマイカの賢人であったボブ・マーリーのポートレイトを見ても「ヤカラ」という感想しか持てないとしたら……その目は偏見に曇っていませんか?

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