刑事告発・書類送検・不起訴、そして

横浜副流煙裁判の続きの話。

143、作田氏不起訴処分の通知(3月15日岡田万佑子検事による)|横浜・副流煙裁判・冤罪事件における裁判資料及び未公開記録の公開~事件をジャーナリズムの土俵にのせる~
検察は患者の「感情的な申し出のみに基づく」内容を記載した診断書が虚偽ではないと判断した。検察の見識として極めて不適切。

3月15日、日本禁煙学会理事長・作田学医師に対する刑事告発は、嫌疑不十分により不起訴処分となりました。
以下、刑事告発の概要となります。

2021(令和3)年
3月29日
告発状を、東京地検特捜部へ提出。
告発の趣旨は「虚偽診断書行使罪」。
告発人は藤井氏ら8名。被告発人は作田学医師=日本禁煙学会理事長です。
http://www.kokusyo.jp/%e6%a8%aa%e6%b5%9c%e3%83%bb%e5%89%af%e6%b5%81%e7%85%99%e8%a3%81%e5%88%a4/16215/
(告発時のプレスリリース)

3月31日
上記特捜部からの提案により、神奈川県横浜市青葉警察署に告発状を再提出。

5月28日
青葉警察署が告発状を受理。
このとき被告発人は作田医師のほか、横浜副流煙裁判の原告であったA家族3名と山田義雄弁護士の、合計5名となりました。

【黒薮氏による第87弾】横浜副流煙事件、刑事告発の窓口が東京地検特捜部から青葉署へ変更、告発人らが告発状を再提出 
黒薮哲哉氏メディア黒書より転載 日本禁煙学会の作田理事長に対して7人の市民が起こした刑事告発の扱い窓口が、東京…

2022(令和4)年
1月24日
作田学医師が、青葉警察署より横浜地方検察庁に書類送検される。
ここで被告発人は(おそらくは捜査の結果)作田医師ひとりに戻ります。

日本禁煙学会理事長・作田学氏書類送検2022年1月24日記者会見
問われる厚労省と医師会の姿勢 2022年1月24日、日本禁煙学会理事長・作田学氏が神奈川県警青葉警察署より横浜…

3月15日
横浜地方検察庁「嫌疑不十分」により不起訴処分を決定。
(岡田万佑子検事)

3月21日
藤井氏ら、検察審査会に審査申し立ての理由書を郵送。


●刑事告発の趣旨と内容

作田医師ら被告発人は、刑法161条1項「虚偽診断書行使罪」に該当するとして告発されました。
平成29(2017)年4月19日に、
被告発人のA娘について、診察もせずに診察したかのような「内容虚偽の」診断書①(後の甲3号証)を作成し(作成させ)、
さらにその後、
平成31(2019)年4月16日の口頭弁論に際し、内容虚偽の診断書②(甲46号証の6)を裁判所に提出し「行使した」
というものです。

●ふたつの診断書

ここでは2つの診断書が問題とされています。
診断書①で刑法160条にあたる虚偽診断書作成があったことに言及していますが、直接に告発されているのは、②の虚偽診断書「行使」罪となります。
何故そうなるのか。
まずこの①と②の診断書を、作田医師とA家族側は「同一の診断書である」としているからです。
ただしここには、何故同じ診断書を二度も提出しなければならないのか、また病名が変更されている(間違っている)のはどういうことか、という疑問点があり、完全に同一視は出来ない。このため、どちらか一方を上げるのではなく、両方の診断書を俎上に挙げる必要があったのです。
もう一つは、時効の問題です。
虚偽診断書作成罪・同行使罪の時効は3年
診断書①が「作成」されたのは平成29年4月、「行使」が提訴時(同年11月)としても、時効の3年は令和2年に過ぎてしまっています。
そこで平成31年4月16日に「行使」された②「46号証の6診断書」を使わざるを得なかったのです。
今回の刑事告発が虚偽診断書作成罪ではなく「虚偽診断書行使罪」であるのは、この為です。

ではこの診断書における「虚偽」とはなにか。
第一にこの診断書が「医師法20条違反」である、つまり患者であるA娘を診察せずに書かれたということです。
またその内容に、作田医師が知りようもないこと、つまり受動喫煙の犯人たる喫煙者の特定とその喫煙状況など(おそらくそれはA家族が話したまま)が、作田学という医師の判断として書かれていることが挙げられます。
この2点の「虚偽」については①と②の診断書に共通していて、故にこそ②の「行使」に基づいて①の「虚偽診断書作成」に言及し、そこにある問題の重要性、悪質さをもって、②の「虚偽診断書行使罪」を告発したものでした。

ややこしい。

本件担当刑事が言ったという「細い糸を辿るような論理」とはつまり、①を問題にするのに②を持ち出さざるを得ない、ややこしさと迂遠さを物語っているのだと考えられます。

青葉署はこの難しい問題をまとめ上げ、今年1月に書類送検します。
この書類送検の段階で、被告発人は作田学医師ひとりに絞られました。
そして3月15日。横浜地方検察庁は、嫌疑不十分として不起訴処分を決定したのです。

●不起訴処分を不当とする理由

藤井氏達はこれを不服として検察審査会に審理申し立てを行っています。
その理由書では、不起訴処分を不当とする3つの問題が提起されました。
ただ一般的には黒薮哲哉氏の記事での文章が分かりやすいと思いますので、そちらの文面で紹介します。(「理由書」もこの記事から読むことが出来ます)
http://www.kokusyo.jp/%e6%a8%aa%e6%b5%9c%e3%83%bb%e5%89%af%e6%b5%81%e7%85%99%e8%a3%81%e5%88%a4/16896/

A 判例違反
B 診断書の中で作田医師が創作した記述を、岡田検事が軽視していること
C 岡田検事が法律を文字通りに解釈していない問題

まずA 判例違反ですが、医師法20条と虚偽診断書については、明快な判例が存在します。
福岡高裁宮崎支部平成元年3月14日判決 「虚偽診断書作成罪は医師が公務所に提出すべき診断書等に虚偽の記載をしたときに成立するものであり,また自ら診察しないで診断書を交付した医師法違反の罪はその所為をもって成立するところ,自ら診察しないで診断書を作成することはそれ自体診断書の内容に虚偽を記載することにもなるのであるから,上記は1個の行為で2個の罪名に触れるものである。」
ここでは無診察での診断書交付が、即ち「医師法違反」であり「虚偽診断書作成罪」に当たると明白に述べられています。
なのに何故、ここで敢えて判例に従わないのか。しかも裁判を経て、審議の上でそう判定するのではなく、検事ひとりの判断で、これを無実とする如何なる根拠があるのか、ということです。

ただ一方、患者を自ら診察しないで投薬の指示をしたにも関わらず、医師法違反に当たらないとされた判例も実はあります。
https://www.medicalonline.jp/pdf?file=hanrei_201204_01.pdf
ただしこの文章の最後に「本判決は、無診察治療が適法とされるのは例外中の例外であることを示しており」とあるように、あくまで「例外中の例外」の場合にのみ、認められる可能性を考えることが出来ると読み取るべきでしょう。

つまり作田医師による無診察の診断書発行が、この「例外中の例外」に当たるのかどうか。
ここが問題C、つまり医師法の字義通りにその違反を認めず、作田医師の行いを医師法20条の例外とする理由が一体、存在するのかという問題です。

一般に不起訴とされた理由が知られることはありませんが、今回、藤井敦子氏が担当検事・岡田万祐子氏に電話で問い合わせをしています。その音声が公開されているおかげで、理由の一端に触れることが出来ます。
https://atsukofujii.com/2022/03/28/%e4%bd%9c%e7%94%b0%e5%ad%a6%e5%8c%bb%e5%b8%ab%e4%b8%8d%e8%b5%b7%e8%a8%b4%e3%81%ab%e3%81%a4%e3%81%84%e3%81%a6%ef%bc%88%e6%a4%9c%e5%af%9f%e3%81%b8%e3%81%ae%e5%95%8f%e3%81%84%e5%90%88%e3%82%8f%e3%81%9b/
(注)文章ではなく会話の中での言葉なので、煙福亭が文章の形にまとめ直しています。以下の岡田検事の言葉は全て、そのようにまとめ直したものとご理解ください。
例えば岡田検事は
「(厚労省に問い合わせたところ)医師法20条違反にどういう診察をしたらなるかについての、厚労省が発行した取り決め或いはメルクマール的なものはない。事案によって判断する他ない」

と語っています。
これは作田医師の診断書が医師法20条違反の例外である、という話ではない。
医師法20条そのものが、「個々の事案によって判断する他ない、曖昧なものである」という話になってしまっている。
医師法20条は、これ以上ないくらい明確に書かれているのに?
まさしく岡田検事は、法律を文字通りには解釈していない、のです。

上の判例にも反し、また「その診断は原告A娘を直接診察することなく行われたものであって、医師法20条に違反するものと言わざるを得ず」と明瞭に書かれた横浜副流煙裁判の一審判決を無視しています。
さらにもう一つ。
横浜市健康福祉局によるレセプト返戻にも、岡田検事は反対していることになります。
藤井敦子氏の請求を受けて情報開示された文書には、「直接診察せずに医師が診断書を作成し(黒塗り)渡していたことがわかった。そのため」レセプトを返戻することとしたのだと、これも明瞭に書かれています。
横浜市健康福祉局は、作田医師の無診察での診断書作成を診療とは認めなかったのであり、これはそこで書かれた診断書の無効を意味すると考えられるのです。
https://atsukofujii.com/2021/05/05/911/

さて岡田検事による不起訴の理由は、会話に出てきた言葉からはこうなります。
「まったく診たこともない人の病名を勝手に作り上げた、診断書を出したのとは、ちょっと違う」
「(医師免許を持った医師である)作田さんが、その当時の資料に基づいて、『受動喫煙症と思ったから、こうして書いたんです』と言ったときに、それを覆すのが難しい」

僕に言わせれば、これはそのまま、作田医師を虚偽診断書作成で訴える理由となります。
まず第一に、作田医師は「まったく診たこともない人の診断書を出した」。
これは事実その通りで、どこにも違うところはない。
資料に基づこうと本人から手紙を貰おうと、「診たこともない人」の診断書を出した事実は動きません。

さらに岡田検事はここで奇しくも「病名を勝手に作り上げた」と言っている。これは正しく、作田学日本禁煙学会理事長が書いた受動喫煙症診断書にピッタリと当てはまります。
「受動喫煙症」というものは、ICD10にも厚労省の疾病分類にも存在しない、彼の率いる「日本禁煙学会」が作り出し、主張している病気に過ぎないからです。
※最初の基準は日本医師歯科医師連盟との共作でしたが、その後version2は日本禁煙学会の単独作であり、現在の日本医師歯科医師連盟は受動喫煙症についての言及をしていない

さらにもう一つ、岡田検事はまた奇しくも「受動喫煙症と思ったから」そう書いたと表現するのですが、これも実に正しい。
作田医師は「そう思ったから」そう書いたのであって、自ら診察した上の所見ではなく、資料に従ったのでもなく、それは十分な根拠を持つ医学的知見ですらない。
こうです。

病名 受動喫煙症レベルⅣ、化学物質過敏症
甲46の6号証では「化学物質過敏症 レベルⅣ、化学物質過敏症」
団地の一階からのタバコ煙に晒され、1年ほど前からタバコ煙に接するたびに昨年暮れから咽頭炎、呼吸困難を生じていた。昨年の暮れからは化学物質過敏症が憎悪し、洗剤、寝具や衣類の化学繊維まであらゆる化学物質に反応し、口内炎、咽頭炎などを生じ、呼吸が困難になる。このため、体重が10Kg以上減少した。
 微量の化学物質にも激しく反応し、外出が困難になっている。
 治療法は、原因となる物質のない環境にいることだけである。

上記のとおり診断します。

https://note.com/atsukofujii/n/nc3054aa2b157
https://note.com/atsukofujii/n/n3e8b84b2be22
個々の内容へのツッコミは、上掲「理由書」や黒薮哲哉氏の記事に書かれているので繰り返しませんが、ひとつ確認できることは、岡田検事がこれを読んで「化学物質過敏症」の診断書ではなく「受動喫煙症の診断書」と認識していたことです(藤井敦子氏との会話より)。

これは二つの事柄を意味します。
 岡田検事は「虚偽診断書」がそもそも甲3号証診断書の問題であると理解している。(甲46の6には受動喫煙症と書かれていないから)
 作田医師の主張する病名が「受動喫煙症」であることを理解している。

2は、当たり前だと思う人もいるかも知れないですが、受動喫煙症と化学物質過敏症が併記してあるのを見て、「この人は受動喫煙症だ」と考えるのは、本当はおかしなことです。医療の世界で一応のとこ正式な病気とされているのは、化学物質過敏症の方であって、受動喫煙症ではないからです。

じゃあ何故、上の診断書を「この人は受動喫煙症だ」と読んでしまうのか。
作田医師がそう読まれるように書いていて、読んだ者はそう読まされていることに気付いていないからです。
これに気付けば、彼が診断書に書き綴った無駄な文章の意味、タバコ煙の犯人を特定してみせるなど診断書らしからぬ記述の存在意義が分かるでしょう。

なんとなくこれを読めば、人は「この人は受動喫煙症だ。タバコってホントに良くないなぁ」と思いますし、しかし受動喫煙症が正式な病名ではないと指摘されれば、そこには「化学物質過敏症の診断書だ」と言える記述がちゃんと並んでいる。
換言すればこの診断書は、「化学物質過敏症の患者を受動喫煙症だと思わせるように書かれている」のです。
作田学日本禁煙学会理事長による、想像的かつ創造的な診断書には、こういう詐術が仕組まれていたのですが、岡田検事には「国家資格を持つ医師が、こうと判断した病名を書いた」だけの診断書としか読み取ってもらえなかったようで、残念なことです。
しかしこのように人を騙せてしまえることこそ、藤井氏らが、反訴の中心に件の診断書と作田学医師を据えている理由なんだと僕は考えています。

元の横浜副流煙裁判では「訴外」であった、つまり一見部外者であるような、作田学医師・日本禁煙学会理事長を藤井氏達が訴えることには、二つの意味があると考えます。

まず第一に、元の原告A家族の支離滅裂な言い分を支えたのが作田医師であり、証拠筆頭が彼の書いた甲1〜3号証診断書であったこと。
A家族の訴えは、将登氏が「日中から深夜までほとんどひっきりなしにタバコを吸い続けている」とか「風は一年中、藤井宅からA家族宅に向けて吹いている」など、極端かつ非現実的なもので、また部屋中に充満するほどの煙だと言ったり、少量の煙でも反応するほど敏感と言ってみたりと、支離滅裂なものでした。

しかし「国家資格を持つ医師」である作田学が、診断書に彼らの主張を書き写し、また意見書等でA家族の不利な事実についても擁護する。
「国家資格を持つ医師」がそれを「医学的に正しい」かのように主張するのでなければ、そもそもA家族に裁判を起こすことが出来たかどうかも分からない。
これによって藤井将登氏と家族は3年に渡る裁判に巻き込まれ、負担を強いられた。
これを訴えるものが、3月14日に訴状が提出された損害賠償裁判(民事)でしょう。

そしてもう一面。
作田学日本禁煙学会理事長がそれをできた理由が「国家資格を持つ医師」という権威であったこと。逆に言えば、作田理事長が「医師という立場」を利用して、一市民を4500万円の損害賠償裁判に陥れる手助けをしたこと。
このことの是非を問うたのが、刑事告発だったと言えます。
結果、藤井氏らの刑事告発は、青葉署により書類送検はされたものの、岡田検事により不起訴、となりました。

まあ一般的に、医療訴訟が刑事訴追されることは難しいと言われています。
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08364.html
このデータから医療刑事裁判数2012〜2016年の平均を出すと、1年に4.8件。
警察への届け出100件、立件送致(書類送検など)が63件なのに比べて、明らかに狭き門だと分かります。
けれど2000年代の一時期には、医療刑事裁判が増加していた時期がありました。2005年には刑事裁判が47件となり、これは立件数91件の50%を超えています。
しかしその結果2005〜09年の有罪率が、医療裁判で76%にまで落ち込み、また医療界や世間からの非難を浴びたことでその後、以前にもまして医療事故の刑事訴追は難しくなり、今では「よほどの事案でないと刑事立件されない」と言われるようになった。
医療界ではこの数年の事態を「異常な刑事介入」と呼んでいるようです。
(刑事裁判全体では年間百万人前後が起訴されているのですが)https://www.m3.com/news/open/iryoishin/818692
なので検察庁が医師を訴追することに及び腰になってしまい、法解釈についてまで厚労省にお伺いを立てるような事態も、この状況を考えればあり得るのかも知れません。(注)
と言うか、
そもそも医師法とは行政法に区分されるものでしょうし、ならば管轄省たる厚生労働省に(医師法20条について)質問することは、それほどおかしなことではないのかも知れません。
ただし、
「医師法20条違反にどういう診察をしたらなるかについての、厚労省が発行した取り決め或いはメルクマール的なものはない(よって)事案によって判断する他ない」
という厚労省の回答と、岡田検事の解釈は、ちょっとおかしいと思っています。
この(よって)は、煙福亭が書き加えたもので、岡田検事の言葉ではないのですが、彼女はどうやらこう解釈している。
けれど僕の考えでは、
「医師法20条違反にどういう診察をしたらなるかについての、厚労省が発行した取り決め或いはメルクマール的なものはない(故に、例外的事案があった場合には)事案によって判断する他ない」
と、なるべき筈です。
そして僕の考えでは作田医師の診断書交付は、この「例外」に当たるものではない。
だったらここでは字義通りの法解釈が為されるべきではなかったでしょうか。
刑事裁判は民事よりも形式的な法解釈がされるものだと僕は聞いていたのですが、そうではなかったんでしょうか。

もちろん僕でも、医療過誤に対する刑事裁判は慎重に行わなければならないとは思います。
ただし、です。
患者死亡に至ったような事案ですら刑事訴追は難しいのだから、虚偽診断書行使罪なんて軽い事案が簡単に起訴されるべきではない…という考えは、良くないです。
まず第一に、「虚偽診断書作成罪・同行使罪」という医師に特化した罪名が刑法に存在する意味を軽視しているという問題があります。

そしてもう一点より重要なのは、医師というものは実際上、刑事処分されなければ医師としての資格を問われない、という実状があるからです。
医師とは医師法に基づく国家資格をもった存在です。
なので医師は刑事処分の他に、医師法による行政処分を受ける場合がある。
医師法7条ほかに規定されているように、これは厚生労働大臣が、医道審議会の意見をもとに下すもので、医業の停止や免許取り消しを含みます。
つまり医業の停止や免許取り消しといった、医師の資格を問うべく処分を行えるのは、実は裁判所ではなく、厚生労働大臣と医道審議会しかいないのです。

だったら医療に不案内な検事や判事に裁きを委ねるんじゃなく、厚労省と医道審議会が公正な裁きをするのに任せればいいんじゃないの?と思ってしまいますが、現実にはそんなことにはなりません。
医道審議会による行政処分の「ほとんどは刑事処分の後追いであり、独自の調査をすることがない」からです。

これは煙福亭の独断や感想ではなく、日本医師会のHPに書かれている言葉です。
医の倫理の基礎知識 2018年版【医師の基本的責務】A-9.医道審議会の組織と機能https://www.med.or.jp/doctor/rinri/i_rinri/a09.html
藤井敦子氏がインタビュー動画で「医師や病院は、刑事処分さえなければ民事でなんと言われようと平気」と語っていた理由、不起訴を予想しながらも藤井氏らが刑事告発をしなければならなかった理由は、ここにあります。
そして結局は藤井氏らが予想した通りに、検事は医療裁判を避けて不起訴処分を決定する。刑事処分されなかった医師は医道審議会・厚生労働大臣から行政処分されることもない。
これでは堂々巡りです。
この国で医師という存在は、何者からも裁かれない特権階級ということになってしまいます。
この意味で今回、作田医師の虚偽診断書行使罪が不起訴処分となったこと、ことに岡田検事がその問題とすべき内容を十分に理解できなかったことは、僕にはとても残念です。

このブログで何度も考察しているように、受動喫煙証の診断書とは、なにより喫煙者を追求し、訴えるために出されるものです。
検察がこれを咎めようとしなかったことで、今後横浜副流煙裁判と同様の裁判を招きかねません。
そして一方、問題は医師の職業倫理に関するものであり、医師というものの社会的信用に係るものです。ここにおいては医道審議会と厚労省こそが、これを正しく裁くべき責任を負っているのではないでしょうか。
「作田医師の行った行為は、患者と医師の信頼関係によって成立する医療の仕組みを破壊する行為であります」
岡本圭生医師は民事裁判に寄せた意見書で、こう言っています。
http://atsukofujii.lolitapunk.jp/%E5%B2%A1%E6%9C%AC%E5%85%88%E7%94%9F%E6%84%8F%E8%A6%8B%E6%9B%B8%EF%BC%88%E5%8D%B0%E9%91%91%E5%85%A5%E3%82%8A%EF%BF%BD%EF%BF%BD%E4%BF%AE%E6%AD%A3%C3%97%EF%BC%92%EF%BC%89.pdf
作田医師の行いを医師の職業倫理に反するものと考え、訴える医師は存在するのです。

平成14年に書かれ、改定され続けている『行政処分の考え方について』には、医道審議会医道分科会のこのような決意が述べられていました。
「国民の医療に対する信頼確保に資するため、刑事事件とならなかった医療過誤についても、 医療を提供する体制や行為時点における医療の水準などに照らして、明白な注意義務違反が 認められる場合などについては、処分の対象として取り扱うものとし、具体的な運用方法や その改善方策について、今後早急に検討を加えることとする」

https://www.mhlw.go.jp/content/10803000/000475756.pdf

がんばれ。
医道審議会の、新しい「行政処分の考え方」を示すチャンスは、ここにあります!

3月14日、藤井将登・敦子氏は、作田学医師を含む4人を損害賠償裁判に訴えました。
次は民事裁判です。
http://atsukofujii.lolitapunk.jp/%E6%B0%91%E4%BA%8B%E8%A8%B4%E7%8A%B6%EF%BC%88%E5%90%8D%E5%89%8D%E4%BF%AE%E6%AD%A3%E6%B8%88%E3%81%BF%EF%BC%89.pdf
次の民事裁判では、僕はなによりも、検証と議論が正しく行われることを願っています。

今回の不起訴について「作田学」を名乗る人物がブログで何か言っていますが、僕から見れば戯言です。
https://ameblo.jp/tobaccofree-202105/entry-12733441512.html
彼は確かに「作田学」と名乗ってはいますが、彼が本当に「作田学日本禁煙学会理事長」なのかは分からない。またそれ以上に、作田学日本禁煙学会理事長が声明を出すのであれば、日本禁煙学会HPなどで公式に出すべきでしょう。
彼は前記事に、「私が個人的に行ったことであり、日本禁煙学会としてはまったく関与していない」と書いていますが、横浜副流煙裁判の、ことに意見書等について、これは間違いです。
何故なら甲81号証で作田医師は「日本禁煙学会の理事長としての所見を述べさせていただきます」と宣言しているからです。
もちろん現実には、作田理事長の独断先行だったかも知れません。だとしても所詮それは内輪の問題です。組織の長が、虚偽を述べることの許されない裁判書面で言ったからには、社会的には「日本禁煙学会として関与した」が事実となります。
またこの「作田学」は今回の刑事告発を「虚偽告発」と呼び、侮辱罪に当たることを匂わせていますが、これが本件を立件送致した青葉署に対する侮辱であると気付いているでしょうか。
http://atsukofujii.lolitapunk.jp/%E7%94%B2%EF%BC%98%EF%BC%91%E5%8F%B7%E8%A8%BC%EF%BC%88%E4%BD%9C%E7%94%B0%E5%AD%A6%EF%BC%89%E5%90%8D%E5%89%8D%E4%BF%AE%E6%AD%A3%E6%B8%88.pdf

と、ここまで書いて記事を上げようとしたら、すんごい情報が飛び込んできました。

検察審査会に行っていた申し立ての、議決が出たのです。

「議決の趣旨 : 本件不起訴処分は不当である。」
http://atsukofujii.lolitapunk.jp/%E6%A4%9C%E5%AF%9F%E5%AF%A9%E6%9F%BB%E4%BC%9A%EF%BC%88%E6%B3%A8%E3%81%82%E3%82%8A%EF%BC%89.pdf

検察審査会は、一般国民からくじで選ばれた11人の検察審査員により、検察による不起訴処分が正しかったかどうかを審査するところです。
検察審査会を構成する一般国民の良識からは、岡田検事による今回の不起訴は不当である、と判断されました!
http://www.city.shirakawa.fukushima.jp/page/page002001.html

取り急ぎ、煙福亭が重要だと考える文面を抜き出します。

「上記患者の症状の原因について詳細な記載をするなど、客観的な所見とは言えず、被疑者の作成した診断書は虚偽診断書に該当する。」
「禁煙に関する一般財団法人の理事長という責任ある立場にありながら、影響の大きい診断書を客観的な事実に基づかず作成したことは、関係者に与える影響が大きく責任は重大である。
一般社団法人の間違いです


(注)
しかしそこから数年遡ると、「行政の不作為」つまり厚生労働省が病院などに対し「行政処分しなかった」ことが裁判(民事と刑事とも)に問われ、ここから「行政処分の考え方について」の見直しが、厚生労働省で行われたという経緯もあるようです。
file:///Users/user/Downloads/20006-45(1)-006.pdf
こう見てくると、検察庁から厚労省への忖度や癒着というよりは、両省庁のTug of War(綱引き)って感じに思えてきます。
どっちにしても国民的にはいい迷惑ですが、政治ってのはそういうのが常態なんでしょうね。

何度でも立ち上がる、って感じです

コメント

タイトルとURLをコピーしました